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アルフレッド・ヒッチコック バルカン超特急

70年も前の映画なのに、今観ても全く古びて感じられない面白さがあった。 記憶のあいまいさにまつわる恐怖。自分が見たものを周囲の人間が冷たい表情でことごとく否定していく部分はかなりの恐さ。釣り橋効果満点の、メロドラマ展開や、終盤のアクションな…

テオ・アンゲロプロス 旅芸人の記録

さすがにこういったタイプの映画で四時間、というのは自分にとっては長すぎ。まあ一応はじめからおわりまで、画面を眺めてはいたが、まるで集中を維持できなかった。ネタバレ。芸術 対 戦争に代表される、身もふたもない、圧倒的に強い「現実」の戦いがとに…

ジャン・リュック・ゴダール はなればなれに

他の作品でも観たことがあるような気がする、男2女1の構図。三人でカフェに行く場面が実に良かった。ぐるぐる席を替わるところと、三人で踊るところ。あとは最後のほうの銃撃場面がちゃっちい感じで笑った。 まあそんなに好きでもないが気軽に見られたので…

ジャン・リュック・ゴダール ウィークエンド

とてつもない映画だった。これぞ花田が言うところのアバンギャルド芸術の典型だろう。最初から最後まで、相反する二つの力の激しいせめぎ合いが続く。他のゴダール映画によく出てくるような、真剣に政治的なアジテーションをしたり、芸術とはなんぞや、とい…

ルキノ・ヴィスコンティ 山猫

三時間以上の大作にもかかわらず、特に長さは感じず。 とにかく公爵の演技がすばらしい。鏡を見て落涙する場面とか、特に。 終盤の哀愁満点の表情なんかも、絶妙なかんじ。「倦怠」に陥ってしまう貴族のお話。せつない。悲しい。政治に手を出さない貴族、と…

青山真治 サッド・ヴァケイション

とりあえず適当にメモ。ネタバレかも。撮り方としては、特に昼の野外シーンでの、光の柔らかい感じが印象に残った。まあレンズがどうとか、フィルムがどうとか、なんか工夫があるんだろう。拡大家族的なモチーフは、黒澤清「ニンゲン合格」あたりを想起させ…

若松孝二 天使の恍惚

三年ほど前に、同じ文芸座オールナイトで観たことのある作品だった。そのときは確か発禁映画特集で、鈴木清順の宍戸錠が白米の匂いフェチでどうの、という映画と、愛のコリーダ、三本目がこれで、ラストが「シャブ極道」という、実に濃ゆいメンツだった。そ…

若松孝二 現代好色伝 テロルの季節

これもアホパワー全開。張り込みのために部屋を借りた家の夫婦も声潜めてやり出しちゃう、というあたりとか、めちゃめちゃ笑った。これはラストで逆に理想に殉じる姿が描かれるあたり、前二作とのコントラストが面白かった。

若松孝二 処女ゲバゲバ

足立色が薄く、若松の妄想が全開になっているあたりが非常に好き。かなり笑いつつ観た。俺が王だ!とか叫びだすところなんか、アホ臭すぎて特によかった。革命について難しい言葉を使ってごちゃごちゃ言ってる奴等がたくさんいるけど、結局こういうことだろ…

若松孝二 狂走情死考

まあ台詞回しはうざいことこの上ない感じで、正直言って一ミクロンも共感できなかったわけだが、最後に結局旦那のほうに戻る、という締め方は良かったと思う。まあ観念をこねくり回してごちゃごちゃ言ってても現実は別物、ということなんでしょう。わかりや…

宮崎駿 崖の上のポニョ

完全にネタバレ。 観賞後しばらく何も言葉が出てこなかった。衝撃度では間違いなく今年一番の映画だった。まず、ポニョが宗介を追って波の上を駆け抜ける場面あたりからの一連の流れで、涙が。二人が抱き合う場面でカタルシスを感じたのはまだわかるんだが、…

ポン・ジュノ 吠える犬は噛まない

この人はよく、日本の漫画に似た想像力を感じる、といった評されかたをしているようである。まあ、そういう面もなくはないとは思うが、彼の作品の異常さ、面白さの本質はそこにはないような気もする。まあ適当だけど。 とにかくわけがわからない、特異なユー…

男はつらいよ

たまたま民放でやっていたのを観た。シリーズ一作目のデジタルリマスター版だったよう。今まで寅さんシリーズを一本通して観た事が一度もないという、非国民にもほどがある状況だったのだが、23にもやってようやく一作品ではあるが観る事ができてよかった…

アルフレッド・ヒッチコック 鳥

古典にもほどがある。しかしちゃんと観ていなかったのでR。メロドラマっぽい脚本の中に異質な他者排除と家族の再生、みたいなテーマが微妙に盛り込まれていないこともなかった。シャマランのハプニング、サインあたりはモロにこの映画の構造を使ってるなあと…

デヴィッド・クローネンバーグ スパイダー 少年は蜘蛛の夢を見る

暗すぎ。地味すぎ。でも二時間近く全くだれないあたりはさすが、という気もする。 監督自身が語っていたが、壁紙やら主人公の服装やらから、画面を越えて強烈に湿り気、ジメジメ感が伝わってくる映画だった。視覚以外の部分にかなりの注意が払われているとこ…

ロマン・ポランスキー 反撥

度を越えた男性恐怖から狂気へと至るドヌーヴの演出は、あまりにもあからさまなほどに、シャワーカーテンシンドローム丸出し。ドヌー部部長としては、彼女の美しい御姿をスクリーンで拝見できただけでも何もいうことはないのだが、正直言って主演がドヌーヴ…

フランソワ・トリュフォー 大人はわかってくれない

僕にもわからなかった。つまらん映画。終盤捕まったときにレオーがタートルネックを鼻まであげる、ポスターにも使われている場面が包茎手術の広告とそっくりなことを思い出したときが一番高揚した、そんな程度の感慨しか涌かず。

フランソワ・トリュフォー あこがれ

主演女優の魅力にくらくらでした。彼女を追いかける子供達に思いっきり感情移入して観たかんじ。

黒沢清 アカルイミライ

五、六年ぶりに再見。当時はなんかカッコいいなと思った程度だった記憶があるが、今回は泣いた。中でも浅野父役の藤竜也の説教シーンと、お前らを赦す、という感動的な宣言と共にオダギリジョーと熱い抱擁をかわすシーンはすごかった。めっちゃ泣いた。あと…

黒沢清 ニンゲン合格

めちゃめちゃ泣いた。後半はほとんど泣きっぱなし。 ネタバレ。まず全体を通して撮り方がおもしろ杉。 どのシーンでも、モノと人を置く位置を相当計算しているな、というのが非常によくわかり、長廻しでだらだら台詞の応酬がある間でも、画面のあらゆる情報…

ハワード・ホークス 赤ちゃん教育 Bringing Up Baby

スクリューボール・コメディの古典中の古典らしい。 たしかにテンションの持続力には目を見張るものがあった。落ち着く暇が一切無い。なんかいつのまにやらデイヴィッドとスーザンが仲良くなっていく感じも、吊り橋効果全開でよかった。ワガママし放題のスー…

クリント・イーストウッド ファイヤーフォックス

どう消化していいのか全くわからない、謎だらけの映画。 序盤から、丹生谷氏すら、なにか集団的な冗談としか思えなくなってくる、などと評しているほどの、驚異的に冗長な映像がひたすら垂れ流される。はじめから結論はわかりきっているわけだから、そこへの…

M・ナイト・シャマラン 翼のない天使

観賞直後の感想。ネタバレ。予想通り、実質上の商業映画デビュー作ということで、悪ふざけ要素は皆無。もちろん随所にユーモアを挟んではくるのだが、誰が見ても楽しめるような塩梅に調整されていた。 そのせいで、シックス・センス以上に「泣き」よりの映画…

M・ナイト・シャマラン サイン

ネタバレ。まず単純に好き嫌いで言うと、「レディ〜」と並んで彼の作品の中でも、一番好きな部類に入る。その理由はなんと言っても、ラスト10分ほどの展開があまりにも馬鹿馬鹿しく、かつ感動的で、その両極への針の振れ具合が信じられない強度に達してい…

押井守 スカイ・クロラ

脚本の人は頭がおかしいと思う。社会学の本を二冊ぐらいかじって悩んだような気になって書いた脚本なんだろうか。原作未読なのでどれぐらい変化があるのかは全くわからんが。馬鹿な学生のレポートみたいな思想を、橋田ドラマみたいな長台詞で逐一馬鹿丁寧に…

ジョン・カサヴェテス アメリカの影

M・ナイト・シャマラン シックス・センス

うん、やっぱりブレてない。彼の映画は、全部同じ事を言い方、見せ方を変えて表現しているだけだ。だが、それがいい。この作品でオチ映画の人、みたいに扱われるようになってしまった、というのは可哀想。脚本と演出の上手さ、鮮やかさに目が行ってしまうの…

M・ナイト・シャマラン アンブレイカブル

見た直後の印象メモ。ネタバレ。ある面では、いわゆるアメリカン・ヒーローの再生を描いた物語といえると思う。その点では、他作品同様、引っ張ってくる素材は非常に古典的といえる。 終盤、デイビッドが妻と同じベッドで眠った翌朝、息子に自分が活躍した新…

M・ナイト・シャマラン ヴィレッジ

とりあえず観終わった直後の印象をメモっぽく。ネタバレ。異質な他者に対する恐怖をめぐる物語。仮想敵の異質性に強く拘るというあたり、ピューリタン時代の神権制あたりまで遡れる、伝統的なアメリカにおける恐怖のあり方を踏襲しているように感じた。別エ…

石井輝男 女体渦巻島