2006-01-01から1年間の記事一覧

原一男 極私的エロス・恋歌1974

原と以前関係のあった女性、武田美由紀が、彼との間の子を引き取ってアパートを出て沖縄で暮らすようになってから、自力で黒人兵士との間に出来た混血児を出産するまでの経過に密着した、まさに極私的と言うにふさわしいドキュメンタリー。しかも録音を担当…

ジョルジュ・アガンベン バートルビー 偶然性について

アガンベンによるバートルビー論と、バートルビーの新訳と、訳者高桑和己氏によるバートルビー論、「バートルビーの謎」から成る。 アガンベンのバートルビー論のキモは、「潜勢力」という用語にあると思われる。どこまでこの語が理解できているかはかなり怪…

ロラン・バルト プロレスする世界

バルトが見ていたプロレスは、現在の日本のプロレスと比較すると、かなり見世物的要素の強いものであったようなので、彼の議論をそのまま日本のプロレス論として読むことはかなり難しい。と言っても、プロレス全般に共通する見世物的、ショーマンシップ的要…

村松友硯 私、プロレスの味方です 

所謂暗黙の了解を守った上でのプロレス、「プロレス内プロレス」(ケーフェイとほぼ同義と見て問題ないだろう)と対置する形で、猪木の時にその枠をはみ出していくようなプロレスを「過激なプロレス」と定義したところが肝。バルトのプロレス特有の胡散臭さ…

AV女優2

AVの世界に入ってくる女の子は、ほぼ例外なく家庭の問題を抱えている子ばかり、というのはなんとも。 自分が所謂マトモな家庭に育っただけに、想像することしかできんのだが、それでもなんとか少しでも彼女達の考えに近づきたい、と思って読んだ。偶然性の問…

アダルトビデオジェネレーション

高橋源一郎 惑星P−13の秘密

架空の書物の断片という設定を用いて、技巧の限りを尽くした短編集。 終盤の文体遊戯なんかは、日本語でしか出来ない部分が出ていて面白かった。 一つ一つの物語に何かしらの鋭い発想力が見られる。それで最終的に二百ページ以上に膨らませるというのは、流…

ガルシア・マルケス 予告された殺人の記録

リーダビリティの高さに惹きこまれ、一気に読了。 探偵小説的な構造が用いられていたから引き込まれたような気もする。違うかもしれんが。 細部の描写の積み重ねで構築していく、と言う部分はカフカとかに近いのか。 なぜかウンコおしっこといった中学生レベ…

トリュフォー 突然炎のごとく

男女間の複雑な人間関係を上手く描いている。 序盤鼻につくシーンも散見されたが、途中からは問題なく観れた。 ロマンティックラブイデオロギーがいかに欺瞞に満ちたものであるか、っちゅーことがよくわかる映画だった。 一人の異性を永遠に愛し続ける、とか…

ヤン・シュバンクマイエル シュバンクマイエルの不思議な世界

全七作から成るオムニバス短編集。ラストの三つが気に入った。 反復を有効に使いつつ、アストロ球団も真っ青の殺人サッカーを描いた「男のゲーム」。バラバラのパーツから人間ができるまでをコミカルに描いた「闇・光・闇」。人間のコミュニケーションのメタ…

アピチャッポン・ウィーラーセタクン 世紀の光 Syndrome and Century

前後半の二部構成。どちらも病院における人々の日常を切り取っている。前半は農村部の病院が舞台。ほとんどのシーンは引きのカメラからの固定ショット。そのせいか野外のシーンでは風景が印象に残っている。大きなストーリー展開は皆無で、世間話の断片のよ…

ジョン・カーペンター ニューヨーク1997 Escape From NewYork

SFアクション映画のはしりと言われた作品。脚本はベタな感じ。おもしろいのはニューヨーク全体が刑務所という最初の設定と、囚人達のボスが黒人ってことぐらい。 登場人物のネーミングや展開から考えて、TVゲームのメタルギアシリーズはおそらくこの作品の影…

手塚治虫 火の鳥

火の鳥を狂言回しに、SFや大河ドラマなど、多彩な形式で描かれたオムニバス形式の長編。手塚治虫のライフワーク的な作品。大体SFと歴史ものが半々ぐらい。多くの物語は、一言で言ってしまうと、青春ものの要素に仏教的な輪廻思想の要素を取り入れたような感…

アントニオ・ダマシオ 生存する脳 心と脳と身体の神秘 Descartes' Error Emotion, Reason, and the Human Brain

ツァイ・ミンリャン 愛情萬歳

ベルリンかベネツィアどっちかで賞とった作品らしい。どっちか忘れたが。 マンションの空き部屋を舞台に、すれ違う一人の女と二人の男を巧みに描いていた。 お芸術系の映画かと思ったら、意外にユーモアに富んでいて、それなりに楽しめた。 郵便配達してる方…

若松孝二 水のないプール

男の妄想を完全に具現化した映画。アホすぎ。 子供の昆虫標本にヒントを得て、女達を標本化する方法を思いつくってのが笑えた。 終いにはポラロイド持ち出してくるわ、変なポーズとらせるわ、もうめちゃくちゃ。 あと、なんといっても裕也さんの「ジンジャエ…

ジャ・ジャンクー 青の稲妻

19歳の貧乏な男二人の青春を描いた作品。三峡好人とは対照的に、手持ちカメラを使った、対象に寄り添うようなショットが多くを占めていた。手ブレしながらも手持ちカメラで撮ることで、ある種ドキュメンタリー的な空気を出すと言う手法は、最近だとダルデン…

ジャ・ジャンクー 三峡好人 Still Life

フィルメックス映画祭オープニングイベントにて鑑賞。公開はまだ先らしい。 久々に新作映画を観て興奮した。現代の中国でしか撮り得ない映画。 ほとんどのシーンが固定カメラの長廻しで撮影されていた。

ボルヘス 伝奇集

ちょっとインテリすぎる感じは否めないが、小説で新しい表現をしようとしたら、こういう方向性ぐらいしかないんだろうな、という部分を的確に突いているとは思う。 多くの作品において、偽書も含めた大量の書物へのリファレンスを数多く示すことで、一編の長…

豊田利晃 9SOULS

ポルノスター以上の出来。空中庭園は未見だが、個人的には今まで観た彼の作品の中では最高傑作だと思う。監督自身、本気で苛立っていないとこういう映画は撮れないような気がする。苛立ちをごまかさずに、まっすぐぶつけたら、狂気と紙一重のところを表現す…

板尾創路 板尾日記

2005年の正月から一年間の日記を書籍化したもの。「しりとり竜王戦」や「ケータイ大喜利」など、彼自身が出演していた番組に関して、 「色々余計な工夫をしすぎで、逆効果になっている。シンプルなものほどおもしろいのに。」 といった意見を書いていた部分…

山本直樹 守ってあげたい

中・短編集。性のせつなさを描く筆致は見事と言う他ない。ピンク映画〜ロマンポルノあたりに近いものを感じた。表題作はヘンリー塚本作品のようだった。素晴らしい。そろそろ長編も読んでみたい。

2000人の狂人

タイトルに反して、意外と真っ当なお説教映画だった。「未来惑星ザルドス」とかと似た感じ。ふざけてることはふざけてるんだけど、その裏には真面目くさったメッセージ性が透けて見える、っていう。メッセージを前面に押し出すのは恥ずかしいので、スプラッ…

ウディ・アレン アニー・ホール

とりあえずメモ。今まで観たウディ映画の中では明らかに最高傑作だった。 女性とのままならない関係を描いた自伝的(?)映画。 アニーに別れを切り出された際のウディの切り返し。サメは常に前進していないと息絶えてしまうと言う。さながら今の僕達の関係…

 前田日明とUWF

最近、前田日明関係の資料を色々と漁っている。部屋でたまたま目に入って読んだ自伝で彼に惹きつけられた。私は85年生まれなので、もちろんリアルタイムでUを観ているはずはなく、リングスも当時WOWOWに加入していなかったため、全く見たことがなかった。日…

神代辰己 青春の蹉跌

人生のままならさがここまで凝縮されている映画は初めて観たかもしれない。 理想と現実の間で揺れる若者を描いた物語など、それこそ星の数ほどあるに違いないが、ここまで心に響く作品はそうそうない。以下あらすじ。 高校時代学生運動に熱中していた主人公…

園子温 俺が園子温だ!

デビュー作。三十分ちょい。すごい。自意識がフィルムに焼き付いている。 彼の苛立ちが見ているこちらに痛いほど伝わってくる。 カメラ持って走るところや、髪の毛を剃るところなんか、すごくいい。 ラスト、今このときにカメラを回していたという行為だけが…

園子温 桂子ですけど

Keiko's Today Newsのくだりがあまりにも秀逸。特に言うことはない、でも何か言いたいという感覚。ブログとかmixiとかが広まっている現在の状況から考え直すと、より悲惨。どうしようもない。この日記も似たようなものだし。 雪の中を歩くシーンは不思議と明…

島田雅彦 優しいサヨクのための嬉遊曲

カタカナで書いちゃう感じに時代を感じる。右にしろ左にしろ女にしろなんにしろ、結局思春期の鬱屈した精神をどうやって紛らわせるか、という話に収斂してくる、ということだろう。まあわかりきったことだ。特におもしろさは感じなかった。

石井輝男 網走番外地

高倉健のダンスに尽きる。 終盤丹波哲郎と健さんがトロッコでカーチェイスするところなんかも、なかなか迫力があってよかったが、健さんのダンスのインパクトがあまりにも強すぎた。